皆さんは冷凍食品の保存性について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
さすがに半永久的に食べられると考える方は少ないと思いますが、「冷凍」という響きから「長持ちしそう」という印象を抱いているのではないでしょうか。
このページでは、そんな冷凍食品の賞味期限の疑問について紹介していきます。
「賞味期限」は市販の冷凍食品の他、缶詰やレトルト食品、インスタントのカップ麺など、比較的品質の劣化がゆるやかな食品に表示されるものです。かつては「品質保持期限」とも呼ばれていましたが、平成17年(2005年)に賞味期限という名称に統一されました。
これに対し生肉やお弁当、生麺や食パンなどの品質が急速に劣化しやすい食品に表示されるのが「消費期限」です。賞味期限は安全性の担保を示す消費期限とは異なり、美味しさの目安という性格が強いようです。ですから正しい方法で保存されていれば、期限切れでもすぐに食べられなくなるというわけではありません。ただし、賞味期限を過ぎた冷凍食品は、袋を開封した時に変色していないか、腐敗臭はしないか等、見た目やにおいをよく確かめてから調理することが重要です。
食べられる目安となる賞味期限や消費期限とは異なり、製造年月日の表示は義務ではありません。
期限表示の歴史を辿れば、戦後間もない頃に厚生労働省が牛乳に製造年月日の表示を義務づけたのが始まりですが、製造や流通の技術が向上するにつれ、製造年月日だけではどのくらい日持ちするか判断がつきにくくなりました。鮮度志向の助長により、工場の深夜操業や輸送頻度の増加に繋がったり、過度な返品・廃棄の原因になったりすることも理由のひとつとされています。
冷凍食品のパッケージにも製造年月日が明記されていないものが多いですが、メーカーによっては賞味期限が製造後何ヶ月なのかをWebページ等で公開しています。調理冷凍食品の場合は、おおむね12ヶ月後に設定されていることが多いようです。生肉や魚介類等の場合は半年くらいのものもありますが、適切な温度管理がなされていれば、冷凍食品の保存期間はかなり長いように思えます。もちろん、この賞味期限は他の食品と同様に開封前であることが前提条件となります。
消費者庁の資料によれば、その商品のことを一番よく知っている立場の人が賞味期限を設定することになっています。具体的には製造業者や加工業者、あるいは販売業者、輸入食品の場合は輸入業者が挙げられます。
期限の設定は食物の腐敗や食中毒の原因となる菌やカビの有無を調べる微生物試験や、化学分析により品質を確認する理化学試験などの客観的で、科学的な根拠に基づく必要があります。品質には味や香りなどの食品の美味しさを左右する側面もあるため、これらは人間の感覚器官による官能試験が適しているとされています。各試験項目は多岐に渡りますが、業界団体が作成したガイドラインを参考に検査項目を絞り込むことができるようです。冷凍食品の場合、一般社団法人日本冷凍食品協会によって「冷凍食品の期限表示の実施要領」というガイドラインが作成されています。
客観的な指標に基づいて得られた期限に対し、商品の特性や置かれる環境等を踏まえた上で「安全係数」が掛けられます。例えば試験の結果、品質が保持される期間が15か月だった冷凍食品に0.8の安全係数を掛けた場合、単純計算で賞味期限は製造日より12か月後となります。食品の安全係数は0.8以上が望ましいとされていることから、0.7~0.9に設定されていることが多く、いずれにしても賞味期限は試験で得られたデータより少なめに見積もられています。
冷凍食品を適切に長期に渡って保管するためには、いくつかのチェックポイントがあります。まずはパッケージに表示された「保存方法」の項目に必ず「-18℃以下で保存してください」という記載があるように、温度管理の徹底は欠かせません。
一度解凍した食品を再凍結させると、温度変化によって品質が変わっている可能性があります。スーパーで冷凍食品を購入したらドライアイスをもらうか、ドライアイスを常備していないお店ではあらかじめ保冷バッグを持っていくことで、外気の影響による温度の上昇を回避する必要があります。家に帰ったら常温の環境下には置かず、真っ先に冷蔵庫の冷凍室に入れましょう。
冷凍室に入れた後も、日々の生活の中で扉を開けっ放しにする、頻繁に開ける・閉めるを繰り返す、冷め切っていない食品・食材を入れるなど、庫内の温度を上昇させる行為は厳禁です。特に夏場は冷凍室の温度がマイナス18℃以上になりがちなので、未開封でも早めに食べることをお奨めします。
また、買い物から家に戻るまでを含めて一度温度が上がってしまうと、きちんと包装された未開封の食品でも表面に霜が発生します。このような冷凍食品は味や品質が落ちている可能性がありますので、潔く捨てる覚悟も必要です。
まれに冷凍室に保管していた未開封の冷凍食品の袋がパンパンに膨らむことがありますが、これは食品や袋の内側に付着した氷が昇華し、パッケージの中の体積が増えたためで、品質には影響がないとされています。ただし、常温に放置していたものは食品が腐ることで、ガスにより膨張している可能性がありますので注意が必要です。
長い間、冷凍室に保存している冷凍食品は水分が抜けて乾燥したり、空気に触れることで油脂が酸化してしまうことがあります。いわゆる「冷凍焼け」というもので、食感もパサパサ、味も美味しいとは言えないものになってしまいます。(真空パックで包装された冷凍食品は空気から遮断されているので、冷凍焼けを起こしにくいとされています。)外袋を開けると食品がより空気に触れやすくなるため、余った冷凍食品はラップで小分け包装しておくか、ジップロック等で密封して保存します。
賞味期限に関係する食品添加物の代表例が保存料です。
保存料は食品の品質劣化を防いだり、カビや菌の増殖を抑制するために使われます。しかし、冷凍食品の原材料名欄には保存料は見られません。微生物は-18℃以下では活動できないため、別途に保存料を付加する必要はないとされるためです。
冷凍の他に保存性を高める方法として、乾燥させる、塩漬け・砂糖漬けにする、燻製にする等がありますが、冷凍食品はそれらと比較して素材らしさを維持したまま保存ができるのが特長的です。但し、イモ類や豆腐等、一部の冷凍下での貯蔵に向かない食品もありますので、それぞれの特性を活かした保存方法を選択する必要があります。
実は食品の中には、期限表示を省略できるものもあります。
チューイングガムやうま味調味料、ガラス瓶入りのコーラ等に加え、冷凍食品と同じ冷凍ショーケースで販売されている氷やアイスクリームもそのひとつ。では、アイスクリームは何年経ったかわからないものでも食べて大丈夫なのでしょうか?
消費者庁の資料によると、アイスクリーム類や冷菓は「品質の劣化が極めて少ない」として、賞味期限の表示を省略できるということです。ただし、アイスクリームの各メーカーも、おいしく食べるためには購入後、なるべく早く食べることを推奨しています。家庭用の冷蔵庫では冷凍室の温度をマイナス18℃以下に維持するのが難しいためです。
一度溶けて形が変わっていたり、霜だらけになったアイスクリームは味や風味が損なわれている可能性がありますので、食べないほうがよいでしょう。(私のオフィスの冷蔵庫にも、そんなアイスクリームが冷凍室の隅に長年に渡って居座り続けていますが、誰も手をつけようとしません)
製造年月日も記載されていない以上、どれだけ冷凍庫に入っているか判別するために、パッケージに購入した日付を記入する方法もあります。しかし、冷凍食品と同じく「いつ買ったか」よりも、冷凍室の温度を上げないための生活習慣と、食べる前の五感による判断が重要です。