冷凍食品の解凍方法

賢く解凍してこそ光る冷凍食品

「解凍」は「冷凍」と対をなし、カチカチに凍った食品を食べられる状態に戻すのに必要な作業です。

冷凍食品の解凍方法は、食品の性質や冷凍前の状態によって異なります。このページでは市販されている冷凍食品の主な解凍方法と注意点、さらにはホームフリージングされた食品の適切な解凍方法について紹介していきます。

 

【目次】冷凍食品の解凍方法

冷凍食品を解凍・調理する11の方法

ホームフリージング食品の解凍のコツ

解凍に役立つ豆知識

 

冷凍食品を解凍・調理する11の方法

ここで紹介する解凍方法の多くは、市販されている調理済み冷凍食品のパッケージを参照しています。同じメニューの冷凍食品でも、商品によって調理の方法も要する時間も異なるため、個々の商品の詳細な解凍・調理の仕方については、お買い上げのパッケージ裏面をお読みください。

凍っている食品を解凍するには、火力や電磁波によって熱を加える方法、水や気温差を利用する方法などがあります。ここでは一般的に冷凍食品に使われている11の解凍・調理方法をご紹介いたします。

 

 

①電子レンジによる解凍・調理

近年発売される調理済み冷凍食品の多くが、電子レンジ調理に対応しています。お好み焼きやパスタなどでは、電子レンジ専用商品も販売されていて、現代において冷凍食品の代表的な解凍・調理方法と言えます。

電子レンジの機種によって最適な解凍・調理時間は多少異なりますが、ほとんどの冷凍食品のパッケージには、目安として「500w」と「600w」の場合の調理時間が記載されています。それ以上のワット数での調理が可能な電子レンジもありますが、急速に温め過ぎて加熱ムラを起こしやすいため、温める強さを高いワット数に調節できる電子レンジでも、パッケージに表記されたワット数にならい、設定を弱めにすることを推奨します。なお、電子レンジのオート(自動)機能は、意図せぬ結果になりやすいので使わないようにしましょう。

「袋から出すか、出さないか」「ラップをかけるか、かけないか」など、商品によって手順は異なるので、必ずパッケージを確認しましょう。袋を開けると裏が銀色になっているものはアルミ蒸着フィルムを使用しているので、袋ごと電子レンジに入れて解凍すると発火する可能性があります。そのようなパッケージには、裏面にアイコンで「袋ごと電子レンジ不可」などの表記がされています。また、揚げ物はラップをかけると水蒸気によって衣が湿ってしまい、食感が悪くなります。

食品を取り出してみて、まだ冷たかった場合は10秒ずつ再加熱します。温めすぎは調理不良(食品が固くなる、焦げる、破裂するなど)の原因になるため、面倒くさくても少しずつ加熱するのがポイントです。「10秒」という表記が多いのは、電子レンジの加熱最小時間として設定されていることが多いからでしょう。

ターンテーブル式の電子レンジの場合は、冷凍食品を中央に置かず、端に置くようにします。お弁当用などトレーが小分けになっているものは、個々をなるべく離して置きます。フラットテーブル式の電子レンジの場合は、逆に中央に置きます。また、調理時間が明記されている個数以上を同時に温めると、加熱ムラなどの調理不良の原因になります。

最後に、電子レンジで加熱後に庫内から取り出す時は、内容物が熱くなっているので火傷に注意してください。袋を開ける際は蒸気にも気をつけましょう。

 

②オーブントースターによる解凍・調理

一般的な電子レンジの定格高周波出力(食品を温めるパワー)は500Wか600Wですが、オーブントースターは1000Wなど高めに設定されています。短時間で焼くので、表面はこんがり、中身はふっくらさせることができるのが特徴です。パンやピザをトーストするのに向いている調理方法ですが、商品によってはオーブントースター調理ができる冷凍おにぎりや冷凍エビフライもあります。温める際はあらかじめ食品の表面に付着した霜を取り除くと、焼きムラが少なくて済みます。

オーブントースターは電子レンジと違ってアルミホイルが使えます。アルミホイルは熱伝導率が高く、食品を「カリッと」または「サクッと」した食感にしたいときに重宝します。オーブンレンジ(オーブン機能が付いている電子レンジ)でも調理ができますが、専用のオーブントースターと比べて仕上りに時間がかかる傾向にあり、電子レンジの性能によっては食感にも物足りなさを感じるかもしれません。

冷凍庫からそのままオーブントースターへ入れてもいいですが、解凍してから焼くことで、中まで火が通りやすくなります。冷蔵庫に入れて緩慢解凍させる方法がベストですが、解凍モードのある電子レンジを使っても良いです。

今川焼やたい焼きなど、一度レンジで温めてから、仕上げにカリッとオーブントースターで焼くと、より美味しく召し上がれる冷凍食品もありますので、ぜひお試しください。

 

③オーブンによる解凍・調理

オーブンとオーブントースターとの違いは、調理する温度にあります。「オーブン」は高温(250℃くらい)で温め、じっくり熱を通す調理方法です。

ピザは解凍してから焼成すると中まで火が通りやすく、より美味しく召し上がれます。解凍には後述の「冷蔵庫解凍」が適しています。解凍目的で電子レンジを使ってもいいですが、電子レンジで加熱調理まで済まそうとすると、生地が固くなって美味しく召し上がれません。

 

④フライパンによる解凍・調理

IHクッキングヒーターやガスコンロなどを使い、熱伝導によって解凍・調理する方法です。炒飯やスパゲティを炒める、ハンバーグを焼く、餃子を蒸し焼きに(最近では、蓋を使わない冷凍餃子が主流になってきていますが)するなど、バリエーションがある調理方法です。

油をひくか否かは、商品やフライパンの焦げ付き具合によって異なりますが、水分を多く含む食材を冷凍したまま油の入ったフライパンに入れると、油が飛びはねて危険ですのでご注意ください。

他の解凍・調理方法と比較すると、電子レンジの方が時短調理できそうなイメージですが、分量が多いとフライパンの方が早いことがあります。冷凍炒飯を例にとると、半袋だけ温める時は電子レンジと同じくらいの時間のものが多いですが、1袋分まるまる作る場合はフライパン調理のほうが早いです。

 

⑤鍋による解凍・調理

鍋にお湯を沸かし、食品を沸騰したお湯で茹でて解凍したり、煮て調理する方法です。ラーメンやうどん等の麺類、水餃子の調理や、ハンバーグなどを袋のまま湯煎して解凍するのに使われます。パッケージに調理方法として「鍋調理」「ボイル」などと表記されている冷凍食品が該当します。

鍋の大きさや調理器の火力によっても調理時間は変わるので、麺類を加熱する場合は固さを確かめながら作るのが良いでしょう。スープもお湯に入れて沸騰させる商品もあれば、最後に加えるものもあるので、やはりパッケージの手順は要確認です。

商品によって、電子レンジ調理推しもあれば、お鍋による調理を奨めているものもあるのが興味深いところです。また、水餃子を他の具材と一緒に土鍋に入れて煮込んだり、シメに冷凍うどんを入れて啜るのも鍋の醍醐味です。

 

⑥油で揚げる

コロッケやフライ類、フライドポテトの調理方法です。底の深い中華鍋にたっぷりの油を入れ、180℃で揚げるのがスタンダードですが、フライドポテトなど、少ない油でフライパンで強火で焼いて調理できるものもあります。

冷凍された揚げ物全般に言えることですが、火傷をしないよう油はねにご注意ください。食品に霜や水分が付いていると油はねの原因となりますので、水気を切ってから油に入れましょう。

 

⑦蒸し器による解凍・調理

肉まんやシュウマイ等、中華系の食品を中心に使われる解凍・調理方法です。「蒸し器」には鍋に複数の穴が空いたプレートをセットするステンレス製のものや、竹などを編み込んだ中華せいろも含まれます。お湯が沸騰し、蒸気が上がっている蒸し器に、ふきんやクッキングペーパーを敷き、食品を並べて蓋をします。

電子レンジと比べて加熱ムラが少なく、肉汁の流出も少ないのでジューシーに仕上がります。水蒸気によって加熱するため、やわらかくふっくらと、あるいはしっとりと仕上げたい場合にもオススメです。

 

⑧自然解凍

お弁当のおかずに多い解凍方法です。お弁当に凍ったまま入れて、食べる頃に解凍されているという便利さが重宝されています。「今川焼 濃厚クリームチーズ」(ニチレイ)等の冷たいスイーツや、半解凍くらいがちょうどいい冷凍みかん(八ちゃん堂「むかん」)も自然解凍向きです。

自然解凍の場合は「室温約20℃で3時間」などど、温度と時間が併記されていることが多いです。ちなみにJISマークでおなじみの日本工業規格では「常温」を20℃プラスマイナス15℃としており、20℃は常温の中の常温と言えます。

自然解凍対応の冷凍食品のパッケージに頻出する注意事項として、食中毒防止のために、お弁当箱に詰める際は味見をした箸ではなく、清潔で衛生的な箸を使用してください。

 

⑨流水解凍

流水解凍は冷凍枝豆や果実類など、比較的早く解凍しつつも、冷たいままや半解凍状態で食べたい食品に向いています。冷凍食品と一緒に袋に入っている、ラーメンのスープやお好み焼きのタレなどを溶かす際にも使われる解凍方法です。

ザルなどに入れた食品を流水で溶かし、よく水気を切ります。保存袋などに入れておけば食品を濡らさずに解凍できます。

 

⑩冷蔵庫解凍

冷蔵庫の冷蔵室(温度帯は2~6℃)またはチルド室(同0~2℃)でゆっくり解凍する方法です。ホームフリージングした肉や魚、冷凍して届けられるケーキなどの解凍に適しています。

 

⑪氷水解凍

ボールなどの容器に入れた氷水に漬けて解凍する方法です。0℃前後でゆっくりと解凍するので夏場でも食品が傷みにくく、冷蔵室に入れるよりも早く解凍ができます。冷凍された刺身や生魚を元に戻すのに向いていますが、密閉された袋に入れて解凍するのが良いでしょう。

 

 

ホームフリージング食品の解凍のコツ

煮込み料理やスープに使う食材は凍ったまま調理することもできますが、食品の特性や食べ方によっては解凍方法に留意した方が美味しく召し上がれます。

以下に食材別に解凍の上手なポイントを紹介していきます。

 

①肉類の解凍

肉は急速に解凍すると、ドリップと呼ばれる液体が出るため、なるべく冷蔵室に移してじっくり解凍したほうが、うま味を逃さずに済みます。夕食のおかずに使う場合は、朝のうちに冷蔵室かチルド室に移しておきます。急いでいるときは電子レンジに弱加熱(200W前後)か解凍モードが付いていれば、その機能を使用します。涼しい季節ならいいですが、夏場に冷蔵庫から出しての自然解凍は食品が傷みやすいので、衛生的にも避けた方が無難でしょう。

 

②魚介類の解凍

魚も肉と同様、解凍はゆっくり行うとドリップが出にくくなります。冷凍されたマグロの刺身であれば、塩水に軽くつけてから水分を拭き取り、キッチンペーパーで包んでから冷蔵室で解凍すると、うま味が逃げづらくなり美味しく召し上がれます。急ぎの際は、電子レンジの弱加熱で半解凍状態にしてから包丁を入れ、盛りつけます。

 

③野菜の解凍

冷凍野菜はそのまま鍋に入れて調理するか、種類によっては電子レンジ調理も可能です。冷凍前にブランチングしておけば、流水解凍や冷蔵庫解凍でも大丈夫。

 

④果物の解凍

果物は冷凍すると食感が変わってしまうものが多いので、凍ったままジュースにするか、半解凍してヨーグルトに混ぜたりします。原産地が南国のパイナップルやマンゴーは、なぜか凍ったまま食べると美味しく感じられますが、バナナは半解凍のほうが食べやすいとか、果物の種類によってだったり、個人差があると思います。

 

⑤ご飯の解凍

炊きたてのうちに冷凍したご飯は、少し手間をかけるのがよろしいです。1杯分のご飯の入った容器に軽くラップをかけ、電子レンジで1分30秒(500Wの場合)ほど温めてから素早くほぐし、再度1分くらい加熱すると炊きたての美味しさが蘇るようです。

 

⑥パンの解凍

厚切りの食パンは自然解凍か、電子レンジの解凍機能を使ってからトースターで焼くのが最適。フランスパンは表面に霧吹きで水を少し吹きかけてからオーブントースターで焼くと、不思議とパリッと仕上がります。

 

⑦粉ものの解凍

安売りで購入した小麦粉や、コーングリッツ、そば粉など使い切れない粉類は冷凍用保存袋に密閉して冷凍室へ。使うぶんだけ自然解凍して使用します。

 

⑧乾物・茶葉の解凍

焼き海苔や鰹節、干し椎茸などの乾物は湿気に弱いので、冷凍用保存袋に入れて冷凍室に。使うぶんだけ自然解凍させます。レギュラーコーヒーや煎茶・紅茶も同様です。

 

⑨ハーブ・香辛料の解凍

バジルやローリエ等の乾燥ハーブや、七味唐辛子や豆板醤などのスパイス・香辛料は容器のまま冷凍室へ入れておけば、解凍しないでそのまま使えます。

 

⑩ケーキ・和菓子の解凍

スポンジケーキは冷蔵庫解凍が適していますが、大福は冷蔵庫に入れると固くなるので自然解凍か、電子レンジの弱加熱や解凍モードで半解凍にします。

 

⑪その他の食品の解凍

納豆は自然解凍が基本ですが、急ぎの際は電子レンジの弱加熱モードで。多めに作った天ぷらは、オーブントースターを使うと衣がサクサクに。

 

食品の特性を上手に活かして、上手な冷凍・解凍方法を習得しましょう。

 

 

解凍に役立つ豆知識

いくら解凍に力を入れても、その前の冷凍に失敗しては元も子もありません。以下に食品を冷凍する際の注意点や、再冷凍したいときのコツ、電子レンジの解凍に向かない食器をご紹介いたします。

 

★上手な解凍のための冷凍テクニック

・食材はなるべく薄く、小さく切るのがコツ。解凍時間を早め、解凍後の調理もしやすくなります。
・薄切り肉は1枚ずつバラにして金属製のトレーに載せて冷凍すると、食品に冷気が素早く伝わります。凍らせた後で容器や袋に入れておけば、使うぶんだけ取り出せます。
・食品は1食分など小分けにしておくと便利。食品の酸化や雑菌の繁殖を避けるためにも、空気に触れないようにラップに包んだりファスナー付きの保存袋に入れておきます。
・野菜の多くは冷凍すると組織の中にある水分が凍って膨張し、解凍したときに壊れた組織から水分が出てしまうことで食感が悪くなるので、冷凍前にブランチング(固ゆで)しておきます。
・袋を開封した食品は湿気や冷凍室の臭い移りを防ぐため、輪ゴムやクリップで止めるだけでなく、密閉した容器に入れます。

 

★再解凍は厳禁!

スーパーで売られている肉や魚などの生鮮食品は、冷凍されて運ばれたものを解凍して店頭に並べていることがあります。そのような食材は再び冷凍すると味や品質が変わりますので、一度解凍したものは再凍結しないようにします。

どうしても冷凍したい場合は下ごしらえが重要です。塩をふり、水分を拭き取っておくと生臭くなくなり、身も締まります。できれば頭や内臓は取り除き、下味をつけるか、酒や塩をふって急速冷凍させます。

 

★電子レンジ解凍に適さない容器

・プラスチック容器やガラス容器は耐熱性のあるものを選んで使います。強化ガラス製の器やカットグラスは厳禁です。ポリ容器は耐熱温度が100℃以下のものは使わないようにしてください。

・木製の器は焦げやすく、漆器も塗りが剥げたり、ひび割れを生じる可能性があるので使用を控えた方がいいでしょう。

・アルミやホーロー等の金属製の器を使うと危険です。模様として金・銀を一部に使っている容器も適しません。

 

他にも解凍テクニックが入手でき次第、どんどん更新していきますのでお楽しみに!

 

<参考文献>
村上祥子『新冷凍保存のコツ&おかずレシピ 無駄なく冷凍おいしく解凍』成美堂出版
村上祥子『フライパンも鍋もいらない!100%電子レンジメニュー 講談社のお料理BOOK』講談社
講談社(編集)『新今日から使えるシリーズ おいしく節約できる 食品保存マニュアル』
鈴木徹(監修)『冷凍保存レシピBOOK 解凍テクがおいしさのコツ!』朝日新聞出版
ホームライフセミナー (編集)『手間をかけずに鮮度長持ち! 食品保存 早わかり便利帳』青春出版社
野口正見, 白石真人『ぜひ知っておきたい日本の冷凍食品』幸書房