「FAN FUN FROZEN」では基本的にスーパーマーケットで販売されている家庭用冷凍食品を紹介していますが、それとは別に飲食店やホテル等で活用されているプロユースの業務用冷凍食品もあります。
このページでは、業務用冷凍食品の特徴や現状、使用されている分野をまとめています。また、業務用冷凍食品の取扱いのあるメーカーや店舗、通販サイトもご紹介していきます。
戦後、まだ一般家庭に冷凍室付きの冷蔵庫が普及していなかった時代、冷凍食品はまず学校や企業など大量仕入れが必要な給食現場で活躍しました。長期保存が利く冷凍食品は作物の収穫時期や天候不順による不作に影響を受けず、安定した供給を担保できたからです。
その後、昭和の東京オリンピックや大阪万博をきっかけとして、ホテルやファミリーレストラン等の外食産業でも採用されるようになりました。共働き世帯の増加や個食化に伴い、近年増加の一途を辿っている「中食」でも、調理が簡単で廃棄ロスも少ない冷凍食品は重宝されています。
一時、家庭用冷凍食品の生産量が伸長している傍らで、業務用冷凍食品は減少し続けていましたが、人手不足の外食産業をはじめ、調理の時短・簡便化が急務な現場で活用されているため、最近では訪日外国人観光客の増加に伴うホテルでの利用や、中食需要に伴う小売店の惣菜の販売強化等で巻き返しています。
業務用冷凍食品のカタログを見ると、家庭用のそれと比べてレパートリーが豊富であることに気づきます。味付けもちろん、取り扱う魚の種類や切り方、デザート・スイーツ系のバリエーションが豊富です。
肉や魚であれば味つけをしていないものや、パスタの麺のみ、あるいはソースのみといった具材としての商品が多いのが業務用冷凍食品の特徴です。下ごしらえの必要がない冷凍食品のメリットを活かしながら、店独自の味付けでオリジナリティを出せます。
包装は調理例の写真を載せた家庭用冷凍食品のパッケージと比べ、凍った状態の中身を見せる透明色で、印刷も単色づかいの簡易的なものが多いです。グルメ志向・高級路線の冷凍食品に関しては、多色使いでフルカラー写真も載せたパッケージも見られます。
パッケージの容量がkg単位だったり、注文のロットがカートン単位となっていますが、業務用冷凍食品をバラ売りしている小売店やネット通販もあるため、大型の冷凍庫を持たない一般家庭でも入手することは可能です。
何の味付けもされていないご飯や、アイスのカテゴリーには入らない解凍して食べる和菓子と言った、一般的な小売店にはあまり見られない商品も業務用冷凍食品には存在します。もっと多くの種類の冷凍食品が地元のスーパーに並ぶことを、いち冷食ファンとして切に願っています。
業務用冷凍食品が活用されているシチュエーションは、大きく分けて「給食」「外食」「中食」の3つがあります。カテゴリごとの取り組みや活用されている冷凍食品を見ていきましょう。
①給食
おもに特定多数の集団に継続的に食事を提供することを目的としている給食は、さらに分類すると「学校給食」「事業所給食」「病院・介護施設給食」が挙げられます。
★学校・幼保施設の給食
児童給食向けの冷凍食品には、おかずの食材として下調理無しで使える水産品(えび、いか等)や農産品(ミックスベジタブル、ブロッコリー等)、自然解凍できるゼリーやプリンが見られます。不足しがちな鉄分やカルシウムを強化したハンバーグやデザートといった、成育に必要な栄養素を補ったものもあります。また、保護者の立場からすると国産品であったり、食物アレルギーの対応を含めた安心・安全が保障された商品が望まれています。
★事業所給食
いわゆる社員食堂がこれに当たります。事業所給食は社員の健康維持やランチ難民の解消のために貴重な存在ですが、人的コストの抑制には下ごしらえや調理済みの冷凍食品が大いに貢献します。
★病院・介護施設の給食
かむ力が弱くなった方でも容易にかめる、歯ぐきでつぶせる等のユニバーサルデザインフード(UDF)の冷凍食品が成長傾向にあります。他にも自然解凍ができる個包装のパンやデザートは、配膳時に埃や菌が付着せず衛生的です。
②外食
家庭の外で食事を取ることを差しますが、給食との違いは不特定多数の集団に食事を提供するところにあります。
★ホテル
宿泊施設の朝食・ランチ・ディナーに見られるバイキングやビュッフェでは、選ぶのが楽しくなる程の豊富なメニューや本格志向・ホテルクオリティが求められます。大量の調理が必要な大型の宿泊施設では、袋のまま湯煎できるボイリングパック入りや、油を使わずにコンベクションオーブンで調理可能な揚げ物などの冷凍食品が活躍しています。
★レストラン・飲食店
客の入りや来店客がどのメニューを注文するか正確に予測するのは難しいため、食品ロスを防ぎ、安定した仕入を確保するには冷凍食品が理に敵っています。大手のチェーン店ではセントラルキッチン(集中調理施設)方式を取っているところも多く、味や品質を一定に保つだけでなく、大量仕入によるコスト削減が図れるメリットがあります。
★居酒屋、ビアホール
例えばビールには枝豆がつきものですが、冷凍枝豆なら事前に自然解凍しておくだけで召し上がることができ、足りなくなった時でも流水解凍で対応できます。他、コロッケ、フライ、カツ等の揚げ物メニューは各冷食メーカーが豊富に取り揃えています。
★レジャー施設
例えばカラオケボックスでソフトドリンクと注文するフライドポテト等のスナック類も、電子レンジ調理であれば調理経験に乏しいスタッフでも手間無く作ることができます。冷凍食品は映画館、ボウリング場、遊園地等のテーマパーク等、アミューズメント施設との相性が抜群です。
③中食
外食との対義語として、家庭の中で取る食事に当たりますが、自炊や手料理とはまた異なり、買ってきたものをそのまま、あるいは温める等して食べることを差します。スーパーで販売されている家庭用冷凍食品も中食の一種とも言えます。
★スーパーマーケット
不特定多数の顧客層が利用する小売店では、串揚げバイキングや中華オードブル等、来店客のニーズに応じた多彩なラインナップが要求されます。それに対して各メーカーは、前日に必要な分を冷蔵庫で解凍して出すだけのお好み焼きやたこ焼き、弾力ともちもちとした食感をキープする茹で伸びしにくいうどんやそば、時間が経ってもサクサクとした食感を保てるコロッケ等、惣菜用途にマッチングした業務用冷凍食品を開発しています。
★ベーカリー/デリカテッセン
持ち帰り用のパンを販売するベーカリーでも、職人不足を補うために、すべてを手作りするのではなく、パン生地を冷凍品で賄う等、人的作業の効率化が求められることがあります。持ち帰り用の惣菜専門店においても同じことが言えます。
★宅配弁当
冷凍のまま盛りつけができる業務用冷凍食品は、仕出し弁当等のデリバリーサービスでも活用されています。割子タイプの冷凍麺は、メインメニューとのセットで提供される小盛りのうどん・そばとして便利です。冷凍食品は長期保存が可能なため、日替り弁当でも翌月のローテーションに使い回しが可能です。
各冷凍食品メーカーは家庭用商品と同じく、各社の強みを活かした業務用の商品展開をしています。業務用として製造していた冷凍食品を家庭用に応用したり、その逆パターンもあります。
★テーブルマーク https://www.tablemark.co.jp/
「加ト吉」をルーツに持つテーブルマークは、「さぬきうどん」をはじめとした冷凍麺に強みを持っています。また、ホテルのビュッフェで朝食として供される焼成済みの冷凍パンは、バリエーションも豊富で利用客に選ぶ楽しさを与えてくれます。
★日本水産(ニッスイ) http://www.nissui.co.jp/corporate.html
水産加工会社として創業百年以上の歴史を持つニッスイは、水産品(凍ったまま調理できる「ふっくら切身」シリーズ等)とその調理加工品(天ぷらやフライ・唐揚げ等)に強みを持っています。クリームコロッケ、オムライス等の卵加工品もラインナップに入っています。
★味の素冷凍食品 https://www.ffa.ajinomoto.com/
主力商品の冷凍餃子は、焼き調理済みのものは袋のままスチームコンベクションオーブンで大量に調理が可能。餃子や焼売、ハンバーグ等でユニバーサルデザインフードの取扱いがあります。グループ会社のフレックはフリーカットケーキや和菓子等、スイーツ関連の業務用冷凍食品が充実しています。
★マルハニチロ https://www.maruha-nichiro.co.jp/
マルハニチロも水産加工に強く、えびカツ等の水産調理品や水産素材の業務用冷凍食品が多いです。他、焼そばや炒飯、春巻や焼売等の点心、グラタン、ウインナー等の取扱いがあります。
★ニチレイフーズ https://www.nichireifoods.co.jp/
ニチレイグループの加工食品事業を担っています。唐揚げ・竜田揚げ、フライドチキン等の鶏肉加工品やチャーハン・ピラフ等の冷凍米飯のシェアが高く、中食・惣菜向けの業務用冷凍食品の取扱いが大きいのが特徴です。
★日清食品冷凍 https://www.nissin.com/jp/about/nissinfoods-frozen/
業務用冷凍食品ではチャーシューメンやワンタンメン、うどん、そばの取扱いがあります。
★日本製粉 https://www.nippn.co.jp/
冷凍パスタやソースの取扱いがあります。小麦粉が主力なのでパン類の商品もバリエーションがあります。
★ケイエス冷凍食品 https://www.ks-frozen.co.jp/
たれ付けされていないミートボールや、豆腐やドーナツ等の業務用冷凍食品を販売。いずれもユニバーサルデザインフードとしても対応しています。
★ハインツ http://www.heinz.jp/
ケチャップで有名なメーカーですが、ホワイトソースやスープ等の冷凍商品も取り扱っています。「オレアイダ」ブランドで市販されている冷凍野菜も、業務用ではハインツのロゴを全面に出して販売されています。
一般的には「冷凍食品メーカー」としては知られていないですが、自社の得意分野を活かして業務用の冷凍食品を販売している企業もあります。
★伊藤ハム http://www.itoham.co.jp/
名前の通り、豚肉等のハムやベーコン・ソーセージでおなじみですが、業務用の冷凍ベーコン・ソーセージを居酒屋等へ卸しています。
★エバラ食品工業 https://www.ebarafoods.com/
焼き肉のたれで有名ですが、業務用ではがらスープやラーメンスープのレパートリーが多く、低温商品では冷凍がらやラーメン用の豚骨白湯スープ等を販売しています。
★エスビー食品 https://www.sbfoods.co.jp/
香辛料のトップメーカー。ハーブ・スパイスを活かしたパスタ・肉料理用のソースやペーストを冷凍食品として販売しています。
★旭松食品 https://www.asahimatsu.co.jp/
「あさひ豆腐」のブランドで知られる高野豆腐のメーカー。賞味期限の長いタイプとして、冷凍保存されたこうや豆腐の取扱いがあります。
★ホクレン https://www.hokuren.or.jp/
「よつ葉牛乳」等の乳製品をはじめ、北海道を生産地とした食品を取り扱っている協同組合も、北の大地が育んだ野菜を冷凍加工品として販売しています。家庭用冷凍食品も取り扱っていますが、業務用ではフレンチフライポテトや皮付きポテトをはじめ、ジャガイモ製品の種類が豊富です。カットの種類もスティック状やスライスカット、マッシュ状と多様で、メニューに応じた注文が可能です。
スーパーマーケットの冷凍ケースにはあまり見かけないものの、業務用冷凍食品に特化したメーカーも多数活躍しています。
★大冷 https://www.dai-rei.co.jp/
骨なし魚が医療給食に採用されて市場を拡大し、国内シェアトップに。その後、骨なし魚を凍ったまま調理できるようにした「楽らくクックシリーズ」を展開しています。同シリーズは製法に特許を持っており、生臭さやパサつきが少なく、ふっくらと仕上がる特長があります。
★日東ベスト http://www.nittobest.co.jp/
学校給食用のりんごシャーベットに端を発し、以降、ハンバーグやトンカツ、麺類とメニューを拡げ、病院や福祉施設の給食でもデザートや惣菜を充実させています。
★MCC(エム・シーシー)食品 http://www.mccfoods.co.jp/
神戸市にある調理食品専業メーカーで、ハンバーグやメンチカツ、ピッツァ、ピラフ等の調理冷凍食品の取扱いがあります。
★神栄 https://www.shinyei.co.jp/
こちらも神戸市の業務用冷凍食品を供給している企業です。冷凍切身等の水産品や、「ホタテ風味フライ」「海鮮チヂミ」等の調理冷食を取り扱っています。
★マリンフード https://www.marinfood.co.jp/
チーズやマーガリンの製造販売をしている会社で、冷凍ホットケーキ等の取扱いもあります。似た名前の企業に「マリンフーズ」がありますが、こちらは日本ハムグループの水産部門を担い、国内のみならず世界中の海から調達した海鮮を、寿司ネタ等の業務用冷凍食品として製造販売しています。
プロユースの冷凍食品を多数取り揃えている実店舗はあまり多くありませんが、ディスカウントスーパーや倉庫型スーパーという形態で運営している店舗が多いようです。
★業務スーパー https://www.gyomusuper.jp/
神戸物産が全国展開している、飲食店関係者も利用している小売店です。2019年10月現在で845店舗を運営しています。家庭用冷凍食品も販売していますが、1袋当たりの内容量が多く、畜肉・魚介・農産品の素材系冷凍食品の取扱いが豊富です。冷凍タピオカドリンクが品薄状態が続くなど、ヒット商品も多く生まれています。
★プロマーケット http://www.tasucall.com/services/promarket/
主に三重県で展開している業務用食材・資材の専門店です。冷凍食材をはじめ、海産品や調味料等が仕入れられます。実店舗で販売されている商品は、通販サイト「タスカルネットショップ」でも購入可能です。
インターネットに接続できる環境にあれば、通販サイトの利用は近くに業務用冷凍食品を買える店舗が無い場合や、車が無くても配達してくれるので便利です。ここで紹介する通販サイトは個人での利用も可能となっています。
★タスカルネットショップ http://www.tasucallshop.com/
前述した「プロマーケット」と同じ会社が運営している業務用食材・食品の通販卸サイトです。ロースカツ等の揚物、モッツァレラチーズ、マンゴー等のフルーツ、その他諸々の冷凍食品があります。食材の他にも、使い捨て手袋等の衛生用品や、ユニフォーム、のぼり等の販促用品も販売されています。イベント用、BBQ(バーベキュー)用など、シーンや用途に応じて特集が組まれたり、お買い得品・アウトレット品や、プライベートブランド「ジェフダ(JFDA)」等、気になるジャンルの商品を検索することができます。個人でも利用が可能です。
★フーヅブリッジ https://foodsfridge.jp/
UCCグループが運営する業務用食材仕入ネット通販サイトです。冷凍食品では自社ブランドのチキンナゲットやホイップクリームをはじめ、メジャーな冷食メーカーの商品はもちろん、冷凍パン製造「イズム」のドーナツやマフィン等、あらゆるジャンルの多様なメーカー製品を検索できます。乾麺・レトルトカレーといった常温品はもちろん、食材以外でも厨房用品やカップ等の卓上アイテム、ストローや紙コップ等の消耗品を多数取り揃えています。
★食彩ネット https://www.syokusai-net.com/
飲食関連業者向け食材のオンライン通販サイト。和風/洋風/中華/韓国・エスニック等のジャンルに分かれた調理食品・調味料を検索できます。冷凍自然素材はマグロや牛肉といったスタンダードなものから、鯨や馬肉までを押さえています。こちらも食品・食材以外に、鍋等の調理器具も販売。10,000円以上の注文で送料無料に(一部地域は例外あり)。
最近では前述の「業務スーパー」が躍進していたり、ネットショップが充実していたりと、一般家庭でも業務用冷凍食品を入手しやすくなっているように感じられます。ハロウィンやクリスマスに代表されるホームパーティーやクラス会、複数の家族で集まって行うバーベキュー等で活用してみてはいかがでしょうか。
※当記事で紹介した内容は2019年12月現在の情報です。紹介した情報は変更される可能性があることをご了承下さい。
<参考文献>
『冷凍食品物語 = Frozen food history : 商品の変遷史 : 1945-2014冷凍食品年表 第5版』冷凍食品新聞社
「食品産業」編集部『すぐ分かるスーパーマーケット惣菜の仕事ハンドブック』商業界
各社Webサイトおよび業務用商品カタログ